郵便配達夫 佐伯祐三

郵便配達夫

佐伯祐三 《郵便配達夫》 1928年(昭和3) 油彩,カンヴァス 80.8×65.0cm

作品解説

本作品は、パリで夭逝した画家・佐伯祐三が最後に描いた人物像の1つです。1928年(昭和3)3月、佐伯は創作の無理がたたり、床に伏せる日が続きました。わずかに恢復に向かった時、偶然に佐伯家を白ひげの豊かな郵便配達夫が訪れ、創作意欲を掻き立てられた佐伯は即座にモデルを依頼します。濃紺の制服に身を包み、椅子に腰かけた郵便配達夫は、左手に火の付いたたばこを持ち、目を見開いて正面を凝視しています。その体は左に大きく傾き、丸みのない直線的なフォルムで固められ、その場で凍りついているかのようです。斜め左上から右下への勢いのある筆の運びは、配達夫の身体のみならず背景の床や壁にも見られ、佐伯の渾身の力を込めた筆跡が心に迫ります。今日、佐伯の代表作として広く知られる《郵便配達夫》。短い画家人生の最後に最高のモデルとして現れたこの配達夫について、妻米子は、後にも先にもその時しか姿を現さず、日が経つにつれてこの人は神様ではなかったかと不思議に思うようになった、と回顧しています。

作家紹介

佐伯祐三 SAEKI Yuzo 1898–1928

1898年(明治31)大阪生まれ。大阪府立北野中学校(現・北野高等学校)在学中に赤松麟作の画塾で学ぶ。東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に進み、卒業後の1923年(大正13)11月に渡仏。翌年初夏、モーリス・ド・ヴラマンクに作品の批評を請い、大きな影響を受ける。やがて、パリの石造りの建物や下町の店先をモチーフとし、自らの作風を見出していく。1926年(大正15)に一時帰国し、里見勝蔵らと一九三〇年協会を結成。1927年(昭和2)8月に再渡仏。街頭に貼られたポスターの文字などを撥ねるような筆致で描く、独自の境地に達した。1928年(昭和3)2月、パリ近郊のヴィリエ=シュル=モラン村での写生旅行を敢行。3月、郵便配達夫を題材にした人物画など数点を描いた後病床に就き、8月16日、パリ郊外の精神病院にて30歳で死去。

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