グロレーの教会 モーリス・ユトリロ

グロレーの教会

モーリス・ユトリロ 《グロレーの教会》 1909年頃 油彩,ボード 53.6×73.4cm

作品解説

「白の時代」にユトリロは、建物の壁がもつ独特のマチエール(質感)を表わすため、油絵具のなかに石灰、卵の殻、砂などを混ぜて描いたようです。孤独な少年時代には壁の上に絵を描き、また漆喰のような壁のカケラで遊ぶなど、壁への愛着があったといわれます。20代半ば頃に描いた《グロレーの教会》は、画家が当時暮らしていたパリ近郊モンマニーに近いグロレーのサン・マルタン教会を中央にとらえた街景です。安定感のある構図に、教会とその両側に並んだ建物は、絵筆を幾度も重ねて複雑な色調で塗られ、長い年月を経た壁の質感が巧みに表現されています。人の営みを支える建造物ですが、重厚な画面には人の気配が感じられず、静けさに満ちています。ユトリロが実景を前にして描いたのか、あるいはしばしば行っていたように絵葉書を写したのかは定かではありません。余分な装飾を排し、小さな街の歴史を支える教会の存在そのものを描こうとしているかのようです。

作家紹介

モーリス・ユトリロ Maurice Utrillo 1883–1955

パリのモンマルトルにて、若き日の画家シュザンヌ・ヴァラドン(1865–1938)の子として出生。祖母に育てられた少年時代にアルコール依存症を患い、20歳の頃から生涯を通じて入退院を繰り返す。母に絵の手ほどきを受けて、対症療法の一つとしてモンマルトルの街路やパリ近郊の風景を描き始める。1910年前後の作品は抑えた色調による「白の時代」、1910年代後半から晩年までは明るい絵具を用いた「色彩の時代」と呼ばれる。多様な前衛芸術が開花した20世紀前半にあって、美術の新しい潮流とは一線を画するユトリロの風景画は早くから評価され、成功をおさめた。南仏ランド県ダクスにて71歳で死去。

作品一覧に戻る
Copyright 大阪中之島美術館準備室 All Rights Reserved.