岸田劉生 静物(湯呑と茶碗と林檎三つ)

静物(湯呑と茶碗と林檎三つ)

岸田劉生 《静物(湯呑と茶碗と林檎三つ)》1917年(大正6) 油彩,カンヴァス 38.0×45.5cm

作品解説

机の上に置かれた三つのりんごと茶碗と湯呑。描かれているのはありふれた静物ですが、画面には異様な緊張感がみなぎっています。ふちが欠けた茶碗やりんごの傷みなどの細部描写に加え、壁のキズや机の汚れた質感も写実的に描かれている一方、机はまるで壁と同じ平面上にあるかのようで、静物の載る空間の奥行きは不明瞭です。また、机の端はわずかに右に上がり、りんごと茶碗は左に傾いており、この奇妙な歪みが静謐な画面に不思議な生命力とリズムを与えています。

本作は、劉生が最も充実した創作活動を行ったとされる鵠沼時代(1917年~1923年)の秀作です。劉生が静物画を手がけたのは、肺結核と診断され思うように屋外での制作ができなくなったためでした。しかし、このやむを得ず取り組んだ題材に、劉生は写実を極め、神秘的な美を表現するのにふさわしい魅力を見出し、有名な《麗子像》とともに、この時期、数々の静物画の名作を生み出しました。

作家紹介

岸田劉生 KISHIDA Ryusei 1891–1929

1891年(明治24)、東京市京橋区銀座で岸田吟香の四男に生まれる。1908年(明治41)、白馬会の葵橋洋画研究所に学ぶ。1910年(明治43)、第4回文展に19歳で《馬小屋》《若杉》が初入選。1911年(明治43)、雑誌『白樺』に接し、バーナード・リーチらを知る。1912年(大正元)、ヒュウザン会結成に参加。1915年(大正4)、草土社を設立、第1回から第9回まで草土社展に出品。1917年(大正6)、第4回二科展で二科賞。1923年(大正12)関東大震災で被災し京都へ移住。1929年(昭和4)、大連からの帰途に立ち寄った山口県徳山にて38歳で死去。

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